Git
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10.5 Gitの内側 - Refspec

Refspec

本書の全体に渡って、リモートブランチからローカルの参照へのシンプルなマッピングを使用してきましたが、もっと複雑な場合もあります。以下のようにリモートを追加したとしましょう。

$ git remote add origin https://github.com/schacon/simplegit-progit

.git/config ファイルにセクションを追加して、リモートの名前(origin)、リモートリポジトリのURL、そしてフェッチする対象のrefspecを指定します。

[remote "origin"]
	url = https://github.com/schacon/simplegit-progit
	fetch = +refs/heads/*:refs/remotes/origin/*

refspecの書式は <src>:<dst> で、その前にオプションとして {plus} を指定できます。ここで <src> はリモート側の参照に対するパターンで、 <dst> はそれらの参照がローカルで書きこまれる場所を示します。 {plus} は、fast-forwardでない場合でも参照を更新するようGitに指示しています。

デフォルトでは、 git remote add コマンドを実行すると、自動的にこの設定が書き込まれ、Gitはサーバー上の refs/heads/ 以下にあるすべての参照をフェッチして、ローカルの refs/remotes/origin/ に書き込みます。 そのため、サーバー上に master ブランチがあるとすると、ローカルでは、そのブランチのログには以下のコマンドでアクセスできます。

$ git log origin/master
$ git log remotes/origin/master
$ git log refs/remotes/origin/master

これらはすべて同じ意味を持ちます。なぜなら、どれもGitにより refs/remotes/origin/master に展開されるからです。

逆に、常にリモートサーバー上の master ブランチのみをプルして、それ以外のブランチはどれもプルしたくない場合は、fetchの行を以下のように変更します。

fetch = +refs/heads/master:refs/remotes/origin/master

これは、このリモートに対する git fetch のデフォルトのrefspecそのものです。 もし、設定内容とは違う内容を一度だけプルしたければ、コマンドライン上でもrefspecを指定できます。 リモートの master ブランチを、ローカルの origin/mymaster にプルするには、以下のように実行します。

$ git fetch origin master:refs/remotes/origin/mymaster

複数のrefspecを指定することも可能です。 コマンドライン上で、以下のように複数のブランチをプルできます。

$ git fetch origin master:refs/remotes/origin/mymaster \
	 topic:refs/remotes/origin/topic
From git@github.com:schacon/simplegit
 ! [rejected]        master     -> origin/mymaster  (non fast forward)
 * [new branch]      topic      -> origin/topic

このケースでは、 master ブランチのプルはfast-forwardの参照ではなかったため拒否されました。 refspecの先頭に {plus} を指定すると、この動作を上書きできます。

さらに、設定ファイルに、フェッチ用のrefspecを複数指定することもできます。 もし、常に master ブランチと experiment ブランチをフェッチしたいならば、以下のように2行追加します。

[remote "origin"]
	url = https://github.com/schacon/simplegit-progit
	fetch = +refs/heads/master:refs/remotes/origin/master
	fetch = +refs/heads/experiment:refs/remotes/origin/experiment

パターン中で、ファイル名の一部だけをワイルドカード指定したグロブを使うことはできません。以下の指定は無効となります。

fetch = +refs/heads/qa*:refs/remotes/origin/qa*

しかし、名前空間(やディレクトリ)を使って、似たようなことは行えます。 一連のブランチをプッシュしてくれるQAチームがいたとして、masterブランチとQAチームのブランチのみを取得したいならば、該当セクションを以下のように使用すればよいでしょう。

[remote "origin"]
	url = https://github.com/schacon/simplegit-progit
	fetch = +refs/heads/master:refs/remotes/origin/master
	fetch = +refs/heads/qa/*:refs/remotes/origin/qa/*

仮に、QAチームがブランチをプッシュし、開発者チームもブランチをプッシュし、さらに統合チームもブランチをプッシュしたりリモートブランチを使って共同で作業をしたりするような複雑なワークフローに従っているとしましょう。そういった場合でも、上述のように設定しておけば簡単に名前空間を分けることができます。

refspecへのプッシュ

このように、名前空間を分けた参照をフェッチできるのは素晴らしいことです。しかし、そもそもQAチームは、どうすれば自分たちのブランチを qa/ という名前空間に格納できるのでしょうか? プッシュの際にrefspecを使えばそれが可能です。

QAチームが自分たちの master ブランチをリモートサーバー上の qa/master にプッシュしたい場合、以下のように実行します。

$ git push origin master:refs/heads/qa/master

QAチームが git push origin を実行する度に、Gitに自動的にこの処理を行ってほしいなら、設定ファイルに push の値を追加することもできます。

[remote "origin"]
	url = https://github.com/schacon/simplegit-progit
	fetch = +refs/heads/*:refs/remotes/origin/*
	push = refs/heads/master:refs/heads/qa/master

このように設定しておくと、 git push origin を実行したときに、デフォルトでローカルの master ブランチをリモートの qa/master ブランチにプッシュするようになります。

参照の削除

また、refspecを使ってリモートサーバーから参照を削除することもできます。削除するには以下のコマンドを実行します。

$ git push origin :topic

refspecは <src>:<dst> という書式なので、 <src> の部分を取り除くと、要するにリモート上の topic ブランチを空にせよという指示になり、リモート上の参照が削除されます。

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