Git
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4.6 Gitサーバー - Smart HTTP

Smart HTTP

これまでの説明で、SSH を使った認証ありのプロトコルと git:// を使った認証なしのプロトコルについてわかったと思います。続いて、それら両方を実現してしまうプロトコルについて説明しましょう。 Smart HTTP のセットアップは、単に CGI スクリプトをひとつ、Git サーバー上で有効にすればおしまいです。Git に同梱されている git-http-backend というスクリプトを使います。 この CGI は、パスやヘッダー情報(git fetchgit push で特定の HTTP URL 宛に送られてきたデータ)を読み込み、クライアントが HTTP を使ってやりとりできるかどうか判断します(バージョン 1.6.6 以降の Git クライアントであれば対応しています)。 そして、CGI の判断が「このクライアントは Smart HTTP に対応している」だった場合は Smart HTTP が使われ、そうでなかった場合はリードオンリー(“dumb”)にフォールバックします(後方互換という意味では、読み込みについては古いクライアントにも対応しています)。

では、標準的なセットアップ方法について説明しましょう。ここでは、Apache を CGI サーバーとして使います。Apache がインストールされていない場合は、Linux サーバー上で以下のようなコマンドを実行してください。

$ sudo apt-get install apache2 apache2-utils
$ a2enmod cgi alias env rewrite

そうすれば、 mod_cgimod_aliasmod_envmod_rewrite も有効になります。いずれも、Smart HTTP の動作に必要なものです。

また、/opt/git ディレクトリのグループを www-data に変更しなければなりません。CGIスクリプトを実行するApacheのインスタンスはデフォルトではそのグループの1ユーザーとして実行されるからです。設定を変更しておけば、ウェブサーバーは自由にリポジトリを読み書きできるようになります。

$ chgrp -R www-data /opt/git

次に、Apache の設定をします。git-http-backend をハンドラにして、ウェブサーバーの /git パスにアクセスがあった場合にそれに処理させるための設定です。

SetEnv GIT_PROJECT_ROOT /opt/git
SetEnv GIT_HTTP_EXPORT_ALL
ScriptAlias /git/ /usr/lib/git-core/git-http-backend/

環境変数 GIT_HTTP_EXPORT_ALL を設定しない場合、クライアントからのアクセスは読み込み専用になり、読み込めるのは git-daemon-export-ok ファイルが保存されたリポジトリだけになります。Git デーモンと同様の挙動です。

最後に、Apacheの設定を2つ変更します。 git-http-backend へのアクセスを許可する設定と、書き込みを認証するための設定です。Auth ブロックを使う場合、以下のようにして設定できます。

RewriteEngine On
RewriteCond %{QUERY_STRING} service=git-receive-pack [OR]
RewriteCond %{REQUEST_URI} /git-receive-pack$
RewriteRule ^/git/ - [E=AUTHREQUIRED]

<Files "git-http-backend">
    AuthType Basic
    AuthName "Git Access"
    AuthUserFile /opt/git/.htpasswd
    Require valid-user
    Order deny,allow
    Deny from env=AUTHREQUIRED
    Satisfy any
</Files>

さらに、対象ユーザー全員のパスワードが記述された .htaccess ファイルが必要です。ユーザー “schacon” を追加したい場合は、このようなコマンドを実行します。

$ htpasswd -c /opt/git/.htpasswd schacon

ユーザー認証を Apache で実施する方法はたくさんあります。 ひとつ選んで設定してください。 ここでは、思いつく限り一番シンプルな方法を説明しました。 また、HTTP 通信が SSL 経由で行われるように設定しましょう。 そうすれば、データはすべて暗号化されます。

ここでは、Apache 設定の詳細についてはあえて立ち入らないようにしました。 Apache 以外の ウェブサーバーを使う場合もあるでしょうし、認証の要求も多様だからです。 覚えておいてほしいのは、Git には git-http-backend という CGI スクリプトが付属していることです。 それが実行されると、HTTP 経由でデータを送受信する際のネゴシエーションを処理してくれます。 このスクリプト自体は認証の仕組みを備えてはいませんが、ウェブサーバーの機能で認証は簡単に管理できます。 CGI に対応している ウェブサーバーであればどれも使っても構いません。一番使い慣れたものを使うのがよいでしょう。

注記

Apacheを使った認証設定の詳細については、Apache の公式ドキュメント http://httpd.apache.org/docs/current/howto/auth.html を参照してください。

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